Take me to rink -appendix-dazzling summer extra
オリンピックは閉会したにも関わらず、依然スケートリンクは大盛況だった。賑やかな声があちこちから聞こえてくる。けれどもそんな周りの音も今のルルーシュには聞こえてないのだろうな、と思った。
「.................」
「ね、ルルーシュ。そんな固くならないで。大丈夫だから。」
「わ......わかってる!」
あれから一週間。すっかり体調も回復したルルーシュと一緒にもう一度あの時のリンクにやってきた。今日はルルーシュもリンクに下りてくれたけど、顔は強張ってるし腰が引けてるし片手は手すりから離れない。さっきからこの調子だ。
でも片方の手でぎゅう、と自分の手を握ってくれるのがなんだか嬉しい。
「じゃ、ゆっくり行くよ。さっき言ったみたいに体重を後ろにかけてみて。前に進むから。」
「後ろ?うし......ほぁ!!」
「うわ」
ぐん、と滑り出す足に体がついていかず倒れそうになるのを手を伸ばして支えるとぎゅう、としがみつかれた。中々いい気分だ。
「大丈夫?後ろって、別にひっくり返って、って意味じゃないよ。」
「わかってるって言ってる!!」
真っ赤な顔で怒鳴りながら必死にしがみつくルルーシュが可愛くてつい笑ってしまう。普段なら人目のあるところでここまで接近してくれることなんて無いから、これはスケート場という場所に感謝だ。
「それじゃ、もう一回やってみようか。手すり持てる?」
こく、と頷くルルーシュが恐る恐る、といった様子で片手を離すと手すりを掴んだ。それを確認してもう一度、ゆっくりと歩き出す。ぎゅ、と握られる手を握り返しながら。
何周か歩いているうちに少しずつルルーシュも氷に慣れてきたようだった。最初に比べると体の固さも取れた気がする。そろそろいいだろうか。
「じゃあ手すりから離れてみようか?こっちの手は僕が握っておくから。」
「は....離すなよ」
「うん。」
ああ可愛いなぁ、と抱きしめたくなるのをなんとかこらえて頷く。ゆっくりゆっくり、手すりから離れて人にぶつからないよう用心しながら中央に近付いてみることにした。この辺の方が氷が綺麗だから、いっそ転んでもあまり濡れずに済むはずだ。
「ほら、もうこんなとこまで来ちゃった。」
「え?....!?」
振り返ったルルーシュがぎょっとしたような顔になる。なんだか浮き輪で泳いでいたら沖に流されたといった様子だ。
「ちょっと手を離してみるよ。」
「え!?ちょ、ちょっと待て!ここに来て何を...」
「この辺の方が人が少ないから安全だよ。大丈夫。」
「大丈夫じゃない!一体どうしろって....!」
「今までと同じだよ。ほら。」
ぱ、と手を離してみると途端にふらふらし始めるルルーシュを見ているとさすがにちょっと早かったかな、と思ったけれど、ルルーシュもなんとかバランスをとろうと頑張っているようだった。そろそろ手を貸してあげようかな、と思った瞬間、ぐらりとその体が傾いた。慌てて手を伸ばそうとした時、
「!?」
ひゅん、と何かが目の前を通り過ぎたかと思うと、次の瞬間にはルルーシュの姿が消えていた。はっとして何かが過ぎた方に目をやると
「駄目だろ?スザク。お姫様から手を離すなんて。」
「ジノ!?」
「誰が姫だ!」
に、と笑うジノに抱えられたルルーシュが 降ろせ、と金髪の頭を叩いている。何か無性に、腹が立った。
「ぅおっとぉ!?」
ざく、とスケート靴の刃が氷に突き刺さった。惜しかった。
「おいおい、それで踵落としは洒落にならないぜ!?」
ルルーシュを抱えたまま すい、と身をかわしたジノが肩をすくめると、こちらに向き直る。仕留め損ねた。なら次だ。
「うわ、おい!ちょ、冗談だって!暴力反対!」
知ったことか。
標的に向かってもう一度、氷を蹴った。
スケートリンク内は騒然とした空気に包まれていた。誰もが二人の攻防を息をのんで見守っている。
スピードスケートさながらに走り出したかと思うと突然方向転換、かと思えば後方へジャンプ、再び猛スピードで滑走する二つの影。いつの間にかリンク内の客はほとんどギャラリーと化していた。
と、金髪の若者がふいにリンクサイドに寄ったかと思うと、抱えていた女性(と遠目には誰もが思っていた)を降ろした。そこに弾丸のように突進してくる相手に慌てたように再び走り出す。攻防戦はたちまち再開された。
「.....馬っ鹿じゃない?あいつら。」
ようやく解放されてほっと息をついたところに聞こえた呆れ声。聞き覚えのある調子に振り返ると、そこにいたのは溜息をつくカレン。どうやらジノと二人で来ていたらしい。
「大丈夫?ルルーシュ。」
「.........ああ」
「あっちの初心者用のリンクが空いてるから、よかったら練習に付き合うわよ。」
「....そうだな」
じゃあ行きましょ、と促されて歩き出したのにもリンクの二人は気づいてはいないようだった。
次第に周囲からはやんやの喝采が聞こえ始めている。すごい、どこの選手だ、いやそれとも何かの撮影か、と勝手な憶測が飛び交い、オリンピック会場もかくやという盛り上がりだ。
戦いは中々終わりそうになかった。
それからしばらく、スザクとジノには 是非うちのスケートクラブに、次のオリンピックを目指さないか、というスカウトが絶えなかったという。
end.
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お題「健康」でした。
皆さんもお体には気をつけて~
あ、そう言えば昨日は平成22年2月22日という
スーパー猫の日でしたね。
アーサーに何かプレゼントしたのかな。
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