ill-natured Pixie-scene2-
それからというもの何事もなく数日が過ぎました。あの疫病神はあれきり姿を見せません。豆は本当に疫病神を追い払ってしまったのでしょう。
それなのになぜか若者の心は晴れませんでした。
まるでぽっかりと胸の中に穴があいたようで、ひどく物足りないような、寂しいような気がするのです。ですので訓練にも全く身が入りません。御前試合でボクのランスロットを壊しちゃ駄目だよぉ、と科学者が(KMFを)心配するほどです。あの皇女も訪ねてきてくれましたが、全く張り合いがありません。
一体自分はどうしてしまったんだろう、と若者は思いました。
いよいよ明日は御前試合の日です。
KMFの調整を終えて宿舎に帰った若者の前にそれは現れました。
「お前が今度の私の担当か。まぁよろしくな。」
「……」
それは新緑色の髪の少女でした。あの疫病神のように小さくて、ふわふわと宙に浮かんで偉そうにこちらを見下ろしています。
「…君、誰?」
「見ての通りの疫病神だ。」
「……」
なんということでしょう。折角追い払ったと思ったのにまた別の疫病神が来てしまったのです。
少女の姿の疫病神はじろじろと不躾なほどの視線をよこしてきます。そしてふん、と鼻を鳴らしました。
「よくわからんな。どうしてあいつはお前みたいな奴のためにあんな無理をしてたんだろうな。」
「え?」
一体なんのことでしょう。少女は肩をすくめ大きな溜息をつきました。
「知らないのか。我々疫病神というのは、普通は一年で交代するんだ。それ以上『厄』を浴び続けると危険だからな。」
「…ちょっと待って。『厄』って何?」
そう尋ねると少女はますます呆れたように言いました。
「聞いてないのか?我々の役目はお前達人間に代わって『厄』と呼ばれる様々な災いを引き受けることだ。一年間『厄』を受けた者は次の疫病神に交代して『厄』を清めるため休養するのが普通だ。それをあいつは物好きにもずっとお前についていたんだ。」
「…え?」
少女が告げた言葉はあまりに意外でした。てっきり疫病神とは災いをもたらすものだと思っていたからです。
「考えてもみろ。お前は今までどうして無事に生きてこられたと思ってる。お前みたいに策も無く無茶苦茶な戦い方をする奴なんぞあっと言う間に撃たれておしまいだ。それがこうして生き延びて出世できてるのは誰のおかげだ。危ない目にあった時どうやってそこから逃れたか、よく思い出してみることだな。」
少女の言葉に若者は今までのことを思い返してみました。そう考えると思い当たることはたくさんありました。
あの日戦場で疫病神に声をかけられなかったら、地雷を踏んで吹き飛んでいたんじゃないか?いつもの悪口に振り向いたから近づいた敵をみつけたんじゃなかったか?あのときは?あのときは?
「……」
それだけではありません。
疫病神はいつも意地悪ばかり言いましたが、そんな疫病神の声がいつか励みになっていたことに若者は気が尽きました。この疫病神に負けるものか、いつか見返してやる、と自分を奮起させてここまで来たのです。KMFに乗れるようになったのも、御前試合に出ることになったのも考えてみたら全て疫病神の言葉があったからでした。
「本当ならお前みたいな恩知らずの『厄』など、この私が引き受けてやる義理は無いがな。まぁあいつの心根に免じて一年は面倒をみてやる。ありがたく思え。」
「…あの疫病神はどうなったの?」
恐る恐る尋ねてみました。少女はひどく冷たい目でこちらを見ます。
「お前に教えてやるとでも?」
「お願いだから教えて。今どこにいるの?無事でいるの?」
今になって後悔が押し寄せてきます。ちゃんと話をしておけばよかった、短気を起こさなければよかった、と思ってももう遅いのです。
「お前はどうしたい?」
「お礼を言って謝りたいんだ。それから、…これからもずっと側にいてほしいんだ。」
「…ふん。勝手な奴だな。」
少女は相変わらず冷たい目で若者を見つめます。そしてぷいと横を向きました。
「残念だが聖なる豆に撃たれた疫病神はもう疫病神ではいられない。『厄』を受け取れなくなるからな。お役御免ということだ。」
「じゃあどうなっちゃうの?」
「さぁな。知ったことか。」
「そんな、」
「うるさい。とりあえず明日は勝てよ。でないとあいつが頑張ったのが無駄になるからな。」
そう言い捨てた少女はふいと姿を消してしまいました。一人残された若者は呆然と座り込みました。
最後に見たあの綺麗な瞳が何度も思い出されます。ぽつんと頬をこぼれた涙はなかなか止まってくれませんでした。
さて御前試合の日、会場は熱気に包まれていました。何しろ最後に残ったのはあの新型のKMFを駆る異国の若者と皇帝直属のナイトオブラウンズの一人だったからです。
最後の試合が始まりました。周囲が一斉にどよめきます。若者はラウンズの鋭い攻撃にも一歩も引きません。誰もが固唾をのんで見守る中、試合は一進一退で続きました。そしてとうとう皇帝自らが引き分けの判定を下しました。
誰もが若者を称えました。ですが彼の心は晴れないままでした。
「見事な戦いだった。皇帝陛下は大変感心なさって、君に褒美を与えたいとおっしゃっているが、何か望むものはあるかい?」
KMFを降りた若者を呼んだ宰相の第二皇子はそう告げましたが、若者には何も望むものはありませんでした。黙っていると宰相は不思議そうに尋ねます。
「どうしたんだい。何でも言ってみるといい。」
何もいらない、と答えようとしたとき、彼は宰相の後ろに誰かが立っていることに気がつきました。その顔を見て思わず声を上げそうになりました。
「ああ、紹介しておこう。公の場に出るのは初めてだからね。私達の末の弟だよ。」
宰相に促され進み出たのは漆黒の髪の美しい皇子でした。ですがその紫の瞳に若者は覚えがありました。
「…皇帝陛下は望むものをお与えくださると、そうおっしゃっているのですね?」
「そうだよ。なにか決まったかい?」
若者は黒髪の皇子を見ました。皇子がほんの少し、微笑んだような気がしました。
「私の望みは、」
さて私の話はここで終わりだ。
なに、何か言いたそうだな。
豆に撃たれた疫病神のことか。言っただろう。聖なる豆に撃たれるともう疫病神ではいられなくなるんだよ。じゃあどうなったかって?さてな。
まぁなんでも十分役目を果たした疫病神は一つだけ望みを叶えてもらえるのだそうだ。あいつの望みがなんだったのかは知らんがな。
あの馬鹿な男か?皇帝はあいつをラウンズに取り立ててやろうと思っていたらしい。騎士としては最高の地位だからな。
だがあいつは末端の皇子の騎士になることを望んだのだそうだ。変わった奴だな。
ところでこの皇子のことは今の今まで誰も知らなかったらしい。まぁ皇帝には山ほど妃がいるから、そんなこともあるのかもな。
その後二人がどうなったかって?
さぁな。私の仕事は一年限りだからな。
さて、今度の担当はどこのどいつだ?
end.
.......................................................
とゆーわけで節分企画でした。
元ネタは「日本ほにゃらら話」(笑)で
「貧乏神と福の神」ってのがあって、
貧乏な夫婦が家に憑いてる貧乏神と
仲良くなっちゃって、節分の日に家に
来た福の神を追い出しちゃった、とゆー
話だったんだけど、えらくズレたな(^^;
今思うに物質的豊かさだけが幸福ではない、
という話だったのかもしれない。うーむ
奥深し日本ほにゃらら話。
それなのになぜか若者の心は晴れませんでした。
まるでぽっかりと胸の中に穴があいたようで、ひどく物足りないような、寂しいような気がするのです。ですので訓練にも全く身が入りません。御前試合でボクのランスロットを壊しちゃ駄目だよぉ、と科学者が(KMFを)心配するほどです。あの皇女も訪ねてきてくれましたが、全く張り合いがありません。
一体自分はどうしてしまったんだろう、と若者は思いました。
いよいよ明日は御前試合の日です。
KMFの調整を終えて宿舎に帰った若者の前にそれは現れました。
「お前が今度の私の担当か。まぁよろしくな。」
「……」
それは新緑色の髪の少女でした。あの疫病神のように小さくて、ふわふわと宙に浮かんで偉そうにこちらを見下ろしています。
「…君、誰?」
「見ての通りの疫病神だ。」
「……」
なんということでしょう。折角追い払ったと思ったのにまた別の疫病神が来てしまったのです。
少女の姿の疫病神はじろじろと不躾なほどの視線をよこしてきます。そしてふん、と鼻を鳴らしました。
「よくわからんな。どうしてあいつはお前みたいな奴のためにあんな無理をしてたんだろうな。」
「え?」
一体なんのことでしょう。少女は肩をすくめ大きな溜息をつきました。
「知らないのか。我々疫病神というのは、普通は一年で交代するんだ。それ以上『厄』を浴び続けると危険だからな。」
「…ちょっと待って。『厄』って何?」
そう尋ねると少女はますます呆れたように言いました。
「聞いてないのか?我々の役目はお前達人間に代わって『厄』と呼ばれる様々な災いを引き受けることだ。一年間『厄』を受けた者は次の疫病神に交代して『厄』を清めるため休養するのが普通だ。それをあいつは物好きにもずっとお前についていたんだ。」
「…え?」
少女が告げた言葉はあまりに意外でした。てっきり疫病神とは災いをもたらすものだと思っていたからです。
「考えてもみろ。お前は今までどうして無事に生きてこられたと思ってる。お前みたいに策も無く無茶苦茶な戦い方をする奴なんぞあっと言う間に撃たれておしまいだ。それがこうして生き延びて出世できてるのは誰のおかげだ。危ない目にあった時どうやってそこから逃れたか、よく思い出してみることだな。」
少女の言葉に若者は今までのことを思い返してみました。そう考えると思い当たることはたくさんありました。
あの日戦場で疫病神に声をかけられなかったら、地雷を踏んで吹き飛んでいたんじゃないか?いつもの悪口に振り向いたから近づいた敵をみつけたんじゃなかったか?あのときは?あのときは?
「……」
それだけではありません。
疫病神はいつも意地悪ばかり言いましたが、そんな疫病神の声がいつか励みになっていたことに若者は気が尽きました。この疫病神に負けるものか、いつか見返してやる、と自分を奮起させてここまで来たのです。KMFに乗れるようになったのも、御前試合に出ることになったのも考えてみたら全て疫病神の言葉があったからでした。
「本当ならお前みたいな恩知らずの『厄』など、この私が引き受けてやる義理は無いがな。まぁあいつの心根に免じて一年は面倒をみてやる。ありがたく思え。」
「…あの疫病神はどうなったの?」
恐る恐る尋ねてみました。少女はひどく冷たい目でこちらを見ます。
「お前に教えてやるとでも?」
「お願いだから教えて。今どこにいるの?無事でいるの?」
今になって後悔が押し寄せてきます。ちゃんと話をしておけばよかった、短気を起こさなければよかった、と思ってももう遅いのです。
「お前はどうしたい?」
「お礼を言って謝りたいんだ。それから、…これからもずっと側にいてほしいんだ。」
「…ふん。勝手な奴だな。」
少女は相変わらず冷たい目で若者を見つめます。そしてぷいと横を向きました。
「残念だが聖なる豆に撃たれた疫病神はもう疫病神ではいられない。『厄』を受け取れなくなるからな。お役御免ということだ。」
「じゃあどうなっちゃうの?」
「さぁな。知ったことか。」
「そんな、」
「うるさい。とりあえず明日は勝てよ。でないとあいつが頑張ったのが無駄になるからな。」
そう言い捨てた少女はふいと姿を消してしまいました。一人残された若者は呆然と座り込みました。
最後に見たあの綺麗な瞳が何度も思い出されます。ぽつんと頬をこぼれた涙はなかなか止まってくれませんでした。
さて御前試合の日、会場は熱気に包まれていました。何しろ最後に残ったのはあの新型のKMFを駆る異国の若者と皇帝直属のナイトオブラウンズの一人だったからです。
最後の試合が始まりました。周囲が一斉にどよめきます。若者はラウンズの鋭い攻撃にも一歩も引きません。誰もが固唾をのんで見守る中、試合は一進一退で続きました。そしてとうとう皇帝自らが引き分けの判定を下しました。
誰もが若者を称えました。ですが彼の心は晴れないままでした。
「見事な戦いだった。皇帝陛下は大変感心なさって、君に褒美を与えたいとおっしゃっているが、何か望むものはあるかい?」
KMFを降りた若者を呼んだ宰相の第二皇子はそう告げましたが、若者には何も望むものはありませんでした。黙っていると宰相は不思議そうに尋ねます。
「どうしたんだい。何でも言ってみるといい。」
何もいらない、と答えようとしたとき、彼は宰相の後ろに誰かが立っていることに気がつきました。その顔を見て思わず声を上げそうになりました。
「ああ、紹介しておこう。公の場に出るのは初めてだからね。私達の末の弟だよ。」
宰相に促され進み出たのは漆黒の髪の美しい皇子でした。ですがその紫の瞳に若者は覚えがありました。
「…皇帝陛下は望むものをお与えくださると、そうおっしゃっているのですね?」
「そうだよ。なにか決まったかい?」
若者は黒髪の皇子を見ました。皇子がほんの少し、微笑んだような気がしました。
「私の望みは、」
さて私の話はここで終わりだ。
なに、何か言いたそうだな。
豆に撃たれた疫病神のことか。言っただろう。聖なる豆に撃たれるともう疫病神ではいられなくなるんだよ。じゃあどうなったかって?さてな。
まぁなんでも十分役目を果たした疫病神は一つだけ望みを叶えてもらえるのだそうだ。あいつの望みがなんだったのかは知らんがな。
あの馬鹿な男か?皇帝はあいつをラウンズに取り立ててやろうと思っていたらしい。騎士としては最高の地位だからな。
だがあいつは末端の皇子の騎士になることを望んだのだそうだ。変わった奴だな。
ところでこの皇子のことは今の今まで誰も知らなかったらしい。まぁ皇帝には山ほど妃がいるから、そんなこともあるのかもな。
その後二人がどうなったかって?
さぁな。私の仕事は一年限りだからな。
さて、今度の担当はどこのどいつだ?
end.
.......................................................
とゆーわけで節分企画でした。
元ネタは「日本ほにゃらら話」(笑)で
「貧乏神と福の神」ってのがあって、
貧乏な夫婦が家に憑いてる貧乏神と
仲良くなっちゃって、節分の日に家に
来た福の神を追い出しちゃった、とゆー
話だったんだけど、えらくズレたな(^^;
今思うに物質的豊かさだけが幸福ではない、
という話だったのかもしれない。うーむ
奥深し日本ほにゃらら話。
この記事へのコメント
シー様にえらい言われようのスザクさんですけど、実際その通りだから反論できないし。半分以上野性のカンだと思ってました(^^;
ルルーシュなら何も言わずにスザクさんの厄(業?)を喜んで受けそうです。
胡散臭い人物に「望みのものをあげよう」と言われてもうれしかないなーと思ったんですが、そうくるとは思いませんでしたよー!皇族みんな洗脳されちゃったんですね。ビバ!
ま、2人が幸せに暮らしてるんならいいんですよ、ええ。
C.C.はスザクさんに容赦ないです。なんてったってルルのおかんですから(^^;
ルルも最初は義務で疫病神やってたんでしょうけど、段々そうじゃなくなっていったんでしょうねー。ほんとにあんな男のどこがよかったやら。
いつのまにか家族が増えてるけど誰も不思議に思わない。これをミ●キーモモ現象または魔女っ子チ●クル現象と言います(若い人は知らんって)。
スザルルは割れ鍋にとじ蓋ですんで、どーしようもないんですよねー。やーれやれ。
シー様がおかんで魔法によって家族の一員となった「不可思議の国のプリンス・ルルーシュ」さんですか。これだといつか月に帰ってしまいそう…(違)
ちなみに私チッ○ル知りませーん(←見てなかっただけです(^^;)
一年後に謎の巫女様がピザ食いながら居座ってたら、スザクさんは全力で無視しようとするでしょうね(笑)。こうしてどんどん謎の顔ぶれが増えていったらどうしよう(^^;
ま、月に帰ったりはしないと思います、よ。うさぎになってギネヴィア様にとっつかまったりとかも(笑)。
ゆびゆび立てたらゆびゆび立てたら魔法の魔法の呪文~♪の作詞が原作者のG.永井氏と知ったときはびっくらしました。
↑全然違う歌が浮かんできました。関係なくはないけど(笑)
意外な人が意外な歌詞を書いてたりしますよねー。
スザクさんはシー様を完全無視でしょうが、ルルーシュはそうはいかないと思うので(とゆーかちょっかい出されるので)甘い生活には程遠いかもしれません。
そして「離れ離れでいた弟妹」とか増えていくんですよ。誰も不思議に思わない(笑)
みんなギネヴィア様にとっつかまらないよーに気をつけてねー。襟飾りにされるよー(違)
ユフィを小豆洗いにしちゃってゴメンなさい;;「赤は魔除けだから小豆だな」という発想だったんですけど…ネリ様の逆襲が恐い;;
ま、永井氏つながりで(笑)。
「離ればなれの弟妹」(爆!)ありえますよね(^^; 皆でたしたし!とやってほしい。(違)
「ほぅ、貴様か。妹を妖怪扱いしおった不埒者は」とかって怖いお姉様が眼鏡の騎士君連れてお越しになってませんかー?(^^;