hot spring -scene 2-
ふわりと漂う白い湯気の向こうには丸い月が見える。さわりと過ぎる風が心地よい。
今頃ミレイ達は各自の部屋で夢の中だろうか。用意周到な事にビールと日本酒まで持ち込んで随分盛り上がっていたから、明日は全員昼まで爆睡かもしれない。あの状態で風呂になど入ったらどうなるかわかったものではない。最初に入っておいて正解だったと言うべきだろう。こちとら自分勝手な誰かのせいで妙な倦怠感に苛まれて、酒どころか料理もろくに口をつけられなかったのだが。
しかしこの露天風呂はさすがに宿の自慢というだけになかなかのものだ。日本の温泉宿を意識したそうだが、岩を配した浴槽を取り巻くように植えられた木々の配置も絶妙だ。こういう日本人の高い美意識には敬意を表してもいいと思う。お湯も含有成分のせいなのか肌触りが柔らかく温度の割にさほど熱いとは感じない。話に聞くような刺激臭も殆ど無く、身も心もゆっくりとほぐれていくようだった。
「いいお湯だね。」
そうだな、と答えかけて口をつぐんだ。そういえばこいつもいたんだった。というか、酔いつぶれたミレイ達を部屋に戻した後、遅くなったけど、と自分を誘ったのはスザクだった。遅くなったのは誰のせいだ、と言いたかったがこのまま本来の目的であるところの温泉を通過していくのも不本意だったので、誰もいない露天風呂に足を向けてみる事にしたのだ。
「まだ怒ってるの?」
ゆら、と柔らかい波が肩に当たったかと思うと湯船の中でスザクが近付いてきた。昼間と一転してやけに機嫌が良さそうなのがなんだか癇に障ってそっぽを向くと、困ったように笑う気配があった。
「ごめん。謝るよ。でも君もいけないんだよ?」
何がだ。どう考えたって100%お前が悪い。理由も言わずに人の身体を好き勝手に弄っておいて、こっちに非があるような言い方をされてはたまらない。
しん、と沈黙が降りる。
市街地から離れている上に夜も更けているせいかやけに静かだ。どこかで虫の鳴く声がする。湯気の立ちのぼる水面には月が映ってわずかに揺れていた。
と、ひらりと何かが月の上に落ちると小さな波紋にゆらゆらと丸い輪郭が震えた。落ちてきたものを拾い上げてみると子供が手を広げたような形の紅い葉。見上げれば色づき始めた楓がこちらに枝を伸ばしていた。
「きれいだね。」
「ああ。.....」
思わず答えてしまい、はっと視線を向ければ にこ、とスザクが嬉しそうに笑う。妙に気恥ずかしくなって手にした小さな葉に視線を戻した。それを見ているとふと思い出した事があった。
「....お前の家の近くにもあったな。」
「楓の木?そうだね。子供の頃ナナリーに葉っぱを持っていってあげたよね。」
覚えている。色とりどりの葉や丸いどんぐりを二人で競うように拾っては妹のところに持っていった。懐かしい思い出だ。
「お前はどちらかと言うと、その近くのイチョウから落ちる銀杏の方が好きだったようだがな。」
「あれ、バレてた?」
えへ、と笑う顔が子供の頃のままで可笑しくて、つい笑ってしまう。揺れる月まで笑っているようで、いつまでも腹を立てているのがなんだか馬鹿馬鹿しくなってしまった。
「でもほんとに綺麗だよね。」
「そうだな。日本人の自然に対する感性というのは....」
「そうじゃなくて。君が綺麗だっていうこと。」
「..........は?」
何故いきなりそういう話になるんだ。
話の飛躍についていけずぽかんとしていると だからね、とスザクが続けた。
「昼間言ったのはそういうこと。君がすごく綺麗だから誰にも見せたくなかったんだよ。」
「........................は??」
やっぱりわかってなかったんだ、とスザクが笑う。わかるものか。そんな突拍子も無い話など。
ゆら、と湯気が揺れた。たぷん、と肩に当たる波にスザクがまた少し間を詰めたのがわかった。
「ごめんね。でも君があんまり無自覚だから危なっかしくて。つい苛々してしまったんだ。」
こんなに綺麗なのにね、とどこかうっとりしたような口調で呟かれ、熱っぽい視線を向けられると昼間のことを思い出して鼓動が早くなる。きっと赤くなっているであろう顔を見られたくなくて視線を揺れる月に移した。一体こういうときなんと返せばいいのだろう。
「?」
ちゃぷ、という音とともに不意に背中側だけお湯の温度が上がった気がした。かと思うと ちゅ、と肩に柔らかいものが押し当てられる。まさかと思うが。
「..........おい」
「ごめん。そろそろ限界。」
「限界って....おい待て!なんだこの手は!」
「だめ?これでもずっと我慢してたんだよ。」
「ちょ....ちょっと待て!場所を考え....」
「大丈夫。誰もいないよ。」
「そういうことじゃない!」
水面の月が形を無くす。白い湯気が漂う夜空の下に水飛沫の音が聞こえていた。
やや遅くに用意してもらった朝食は宿の主人の計らいか消化の良さそうなものばかりだった。そのおかげで二日酔い気味の一同も快調に箸を進めている。そこへやってきたスザクに あ、とシャーリーが顔を上げた。
「スザク君、どう?ルルの様子。大丈夫?」
「うん。でももう少し寝ておくって。」
「そう?大丈夫かなぁ....」
心配そうに首を傾げるシャーリーに 後で何か持っていっておくよ、と返せば茶碗を手にしたリヴァルがうーん、と天井を仰いだ。
「ルルーシュの奴そんなに飲んでなかったみたいだけどな。あれだけで二日酔いなんてそんなに酒に弱かったのか?」
「そうみたいだね。」
「....あんたはなんでそんなに顔色がいいの?」
じろ、と胡散臭げなカレンの視線を笑みで受け止めたスザクは 軍で鍛えてるからだよ、と軽く返した。
窓の外で色づき始めた楓が一枚、はらりと舞い落ちた。
結局その日の半分を腰の鈍痛とともに布団の中で過ごすことになったルルーシュは、もう二度と温泉になど行くまいと固く誓っていた。
end.
................................................................
水飛沫の音と腰痛の原因は後日別室にて。
(そこが肝心だろがァアア!!!!とか
言わないでねー^^;)
この記事へのコメント
1.5はどこですか?きょろきょろ。
あ、それも後日?(笑)
まぁしかし、この仔羊ちゃんは見事なまでにコロコロと、オオカミさんの前に転がりでますね。ああ…うん、私も悪いのは100%オオカミさんだと思いますよー。風情が台無しです。
どこの国か忘れましたけど、浴室で致したら有罪な国がありますよ。先頃、結婚してない英国人旅行者男女(結構年齢差あり)がホテルのお風呂でバレて捕まってニュースになってましたもん。
ちなみに外国人なので(?)二人が正式に結婚するなら免罪するって話になったらしいですけど…結婚するような間柄なのか謎。
ああ、次は旅行編ですね。にやーり。
カレンさん!もっと突っ込んでやってください。
ここにも狼さんがいるんです。あなたの突っ込みが必要なんです。
この調子で旅行、恋愛、健康と続くんですね?
でもこのキャンペーン、詳細を良く読んだら、キャンペーンに参加した人の記事を読む特設ページとか、検索で一番の人がWチャンスだとかあるんですよね・・・。
まあ、一般な記事ならいいでしょうけど(苦笑)我々は避けるべき?
>りら様
ルルはどーもスザクさんへの警戒心が薄いというか学習能力が無いと言うか.....誰か「こういうシチュエーションは襲われる」とレクチャーしてやって下さい。
え?お風呂でコトに及ぶと逮捕?結婚するなら免罪?「じゃあ結婚します」と嬉々として言う奴いますから内緒にしときましょう。
>薄荷様
そーいえばそちらの狼兄弟(定着してますが)のとこのカレンやジノは最近ご無沙汰ですが.....ほっとくと調子こきそうな兄弟に一度ガツンとやってもらえませんかね?
びぐろぶさんの企画はそのよーになってたんですか。いやいや。....さすがに本気で投稿はしませんが、このよーなモノを世間の健全な女子の方々にお見せしてはいけないと思います。(^^;
外国人旅行客を拘束し続けたり刑を執行しちゃうと国際問題なので、今後「正式な夫婦」になるなら免罪って話になったらしいんですけども。不倫旅行とかだったらどうなんですかね?(いや男が中年のおっさんで、女が若かったので…つい)
釈放されたのかなー。
ホテルに注意書きしてあったらしいんですけど。
因みにお風呂の壁は薄く、窓は開けて(というか窓じゃなく壁を四角に切り抜いた穴?)入るんだそうです。声でバレるんだって。声ださなきゃいいの?とか覗く奴いないの?とかは考えもしない……ですよねー(汗)ははは。
ああ、あとカップルで宿泊していて風呂でのぼせた場合、即座に疑われるそうです。
ま、スザクさんはいつでもどこでも性犯罪に及びそうな人ですから。
「お客様。当ホテルは、くるるぎの持ち込みを禁止させて戴いております」
入口くぐろうとしたら特別警報が鳴り響いてパトカーの群れとヘリがバラバラと上空を…。機動隊前へ~!
「スザク…。信じていたのに…」
「見損ないましたわ。スザクさん」
あれっ?ちょっと!?ぇえ~~~!!??
エネミースザク。
ランペルージ兄妹は生徒会のどっきり企画だと思ってたり。…さて、どうかな。くく。
あ、でもミレイさんとシュナ兄様が組めばやれそうな企画?
アニャさんあたりが「動いたら撃つ」とハドロン砲構えて半ば本気で立ちふさがるかもしれません。
うん?私の思考はどうしていつも変な方向にひた走るのかなー。おかしい。
お邪魔しました。ぺこり。
横レスですが、英国人旅行客の件はドバイでしたっけ?
お風呂とか関係なく、婚前交渉は違法なんですよー
くるるぎさん生きていけないですね、、、
そこで開き直られていきなりルルを拉致って逃走しないといいんですが。のどかな温泉街は一転、警察及び軍隊と凶悪犯の一大捕物劇の舞台に!
中継のヘリなんか出てさ、「犯人は人質を連れて逃走している模様です」とか言って。生徒会のメンバーにインタビューしちゃったりして「信じられません。どうしてこんなことに....」なんて、よよと泣き崩れるナナリーとか。
.....えー、刑事役はF越某でいいですか?
>はお様
初めまして。ご来訪&コメントありがとうございます。
そうか、でゅばーいですか。さすがにイスラム圏はそこらへん厳しいですね。浮気されたら浮気相手も浮気した奥さんも殺さないといけないとかって話も聞いたような。つまりジノあたりが間男しよーとしたら速攻で殺されると.....あや?(奥さんは多分「お仕置き」ぐらいだ。きっと。)
はお様、補足ありがとうございました。ぐぐったら出ました(笑)
なんか最近でっかいホテル建ててましたかね?
いやでもお風呂じゃダメな国あるんですよ~(>_<)どこだっけな。
多分その英国人のニュース見たあとに跳んだ記事とごっちゃになってるんです。
ニュースサイトのリンク幾つか跳んだ先の、旅行の注意が載ってるページなんですが。
暑い国なんです。だから防音に優れてなくって窓はガラスじゃなく鉄格子とかで、声がダダ漏れでバレるっていう…。
風呂じゃなきゃいいんですかね。公園とか。
声が駄々漏れって....(^^;
あー、なんかどっかの同人誌で声がバレるとマズいから攻め側がひたすら歌ってる、っての昔見たことあったなぁ....(ほんとはラジカセで音楽かけてたんだけど故障したからって)