Santa Claus is coming to...-scene2-
「枢木!アスプルンド氏のところから注文だ!すぐ行ってくれ!」
「え!?は、はい!」
「ジェレミア!オレンジのカットは済んだか!?」
「こちらです!」
「すんません!これどこに置きますか!?」
「そこの棚だ!上から3番目!」
クリスマスイブ当日、店は朝からてんてこまいだった。臨時のアルバイトなども加わり厨房も店もいつもより人数が多い。その全員をてきぱきと指示するルルーシュの指導力はすごい、と感心してしまう。
それにしても気になる。抽選は昨夜ミレイの手で行われ、結果は既にルルーシュに伝えられているらしい。一体誰に当たったのだろう。ルルーシュに聞いてみたい気もするけれど、忙しそうでとてもそれどころじゃない。
ありがとうございました、とナナリーの声が聞こえる。ケーキの箱を手に幸せそうに寄り添って店を出て行くカップルが、ひどく羨ましかった。
最後の配達から帰った頃にはもうすっかり日も暮れて、ショーケースの中身も随分少なくなっていた。閉店時間も近い。仕事帰りのサラリーマンらしい男性が小さな箱を持って店を出ていくのと入れ違いのように中に入ると お疲れさまでした、と微笑むナナリーに迎えられた。
「こちらは大丈夫ですから一休みして下さい。先程ミレイさんが差し入れを持ってこられたんです。」
「うん、ありがとナナリー。君も無理しないで。」
そう声をかけて控え室に入ると、フライドチキンの箱が乗ったテーブルの前にはにこにこと手を振るミレイとアルバイトのリヴァルの姿があった。もうちょっと二人きりにしておいてあげた方がよかったかな、とリヴァルの赤い顔を見て思ったが、そんなことにも気づいていないように立ち上がったミレイが椅子を勧めてきた。
「お疲れさま。忙しかったみたいね?」
「ええ、凄い人気ですよね。」
本当に、クリスマス前後のケーキ屋がこんなに忙しいものとは思わなかった。ルルーシュは殆ど休んでいないのではないだろうか。あの細い体で無理をしていないといいけれど。
そんなことを思っていると かちゃり、と扉が開いてルルーシュが顔を出した。厨房も落ち着いたのだろう。ミレイがにこり、と待ちかねたように微笑んだ。
「ルルちゃん、そろそろ準備してね。」
「.......わかりましたよ。」
はぁ、とルルーシュが溜息をつく。途端、どきりと心臓の鼓動が跳ね上がった。準備、というのはつまり、例の準備だろう。
やっぱり嫌だ。例え相手が誰でもこれは譲れない。こうなったら最後の手段だ。
「ルルーシュ!それ僕が行くから!」
「は?」
ルルーシュが驚いたように振り返る。色々考えたが結局これしかない。
「なに言ってる。これは俺が....」
「だって!何かあったらどうするの!?」
「何かって....」
「だから!部屋の中に引っ張り込まれたり押し倒されたりとか!!」
「は??」
まったくわかってなさそうなルルーシュに対し、リヴァルは 聞いてはいけない、と言いたげに耳を塞ぎミレイは意味ありげににまにまと笑っている。
「...あのな。お前一体なに言って...」
「だから、」
そのとき再び扉が開くとナナリーが少し困ったような顔で入ってきた。どうしたのかと振り返ると。
「お兄様、私今からちょっと配達に行ってきますね。お店の方には今アーニャさんが入って下さってますから。」
「え?」
「どうしたんだナナリー?そんな急に。」
「今お電話があって、ケーキを予約して頂いてた南様が、怪我をしてこちらに受け取りに来られないんだそうです。私、今から届けに行ってきますね。」
「え!?」
「駄目だナナリー!罠だ!」
南といえばあの眼鏡の男だろう。ナナリー目当ての客代表だ。それはちょっとやめた方がいいんじゃないだろうか。
「俺が行ってくる!ナナリー、お前はここにいろ!」
「え?でも」
「何かあったらどうする!俺が行ってくる!」
住所はどこだ、と予約者名簿をパソコンで検索し始めるルルーシュを見ていると、つくづく妹が大事なんだなぁ、と思わずにいられない。そもそも今回のことだって、ナナリーの代わりに言い出したことだったと思い出した。
仕方ない。ルルーシュだってきっと今日は疲れてるはずだ。しかももう一仕事残っている。心配は残るけど、少しでも力になりたい。
「僕が行ってくるよ。住所はここだね?」
「え?」
パソコンに表示された住所と地図を頭で照会してみる。最近のアルバイトのおかげで自分の家の近所よりこの周辺によほど詳しくなってしまった。バイクを使えばあっという間だ。
「でもスザクさん、お疲れでしょう?今日だってずっと、」
「平気だよ。それにナナリーに何かあったら大変だし。」
はたして今のルルーシュの心配と、自分が心配していることが同じだということにこの鈍感な恋人は気づいてくれるだろうか。
「じゃあ行ってくるね。それからルルーシュ、危ないと思ったらすぐ逃げてよ。できればジェレミアさんと一緒に行ってきてね。」
「スザク、」
何か言いかけたルルーシュの声を背中に聞きながら部屋を出た。ジェレミアはああ見えて腕が立つ。彼がついていってくれれば大丈夫だろう。本当は自分がついていきたかったけれど。
外に出るとひんやりと冷たい空気に息が白く曇った。そう言えば今日は雪になると言ってたっけ、と思いながらバイクのキーを差し込んだ。
無事配達を終えて帰る頃にはもう店の明かりは消えていた。バイクを裏口に停めると、配達用の収納箱の中から花束を取り出した。幸い潰れてはいないようだ。
やっぱり自分が行ってよかった。配達先を尋ねて呼び鈴を押すと、いきなり扉が開いてこの花束がどん、と突き出されたのだ。なんだ一体、と思っていると花束の向こうの眼鏡とかちりと視線がぶつかり、しばし気まずい空気が流れたものだった。(怪我というのは一応嘘ではなく片足を引きずっていたので お大事に、と言ってきたが)どうもナナリーが来るものと勘違いしていたらしい。あの様子では妙なこともできなかっただろうから、逆に少しだけ気の毒だったかもしれない。
通用口から中に入るとしんと静まっている。もう片付けも終わって皆帰ったのだろうか。でも鍵は開いてたしな、と思いながらいつも休憩に使っている控え室の扉を叩くが返事が無い。やはり誰もいないのだろうか。不思議に思いつつ中に入れば部屋は薄暗く、テーブルの上に置かれたキャンドルのほのかな明かりとツリーの飾りだけが点滅しながら輝いて辺りを照らしていた。
「スザク」
不意に聞こえた声。あれ、と思いながら振り返るとそこに
「...え?」
目に飛び込んだ赤と白。クリスマスの妖精というのはこういうものかもしれないと、一瞬思った。
「......えと.....ルルーシュ?」
「違う」
「え?」
「見ての通りのサンタクロースだ。」
そこにいたのは可愛らしいミニスカートのサンタ風衣装に身を包んだルルーシュ。すんなり伸びた足にはこれも赤い膝上までのブーツ。赤い帽子の下の白い顔はこっちも合わせたように頬が赤く染まっている。その中でじっとこっちを見ている紫の瞳にツリーの明かりが映ってとても綺麗に見えた。きっとこんなに可憐なサンタは世界中どこを探してもいないに違いない。
「ど...どうしたの?配達、行ったんじゃ....」
「だから配達に来た。」
「え?」
「だから。お前が当たったんだ。」
「え??」
どういうことだろう。ケーキは買って帰ろうと思っていたけど、予約はしてなかったはずなのに。
「お前、クリスマスも俺が作ったケーキが食べたい、と言ったじゃないか。あれは予約じゃなかったと言う気か!?」
「え??あの、それって、」
それはルルーシュの誕生日、彼にプレゼントのつもりで注文したケーキを前に自分が言った言葉。まさか覚えてくれていたなんて。
「ルルーシュ、あの、」
「よく働いたいい子にサンタからのプレゼントだ。」
ほら、と差し出されたのは可愛いデコレーションが施された小さなケーキ。なぜかその上にはトナカイならぬ黒猫の飾りが乗っていた。そういえば家で飼ってる猫の写真を見せたことがあったっけ。片目のブチまでそっくりだ。
どうしよう。嬉しくてなんだか泣けてきた。
声がつまりそうになるのをなんとかこらえて ありがとう、と返すと ごし、と目元をこすってケーキを受け取って、かわりにテーブルの上に置いていた花束を差し出した。
「貰い物で悪いんだけど、これあげる。僕のサンタさんに。」
帽子の下の顔が抱えたバラの花束と同じぐらい赤くなった。まるでケーキに乗ってるイチゴみたいだ。
「ね、ちょっと味見していい?」
「え?ああ、」
それじゃあ、とそっと手を伸ばして花束の向こうの小さな顔を包み込むと長い睫毛がぱしぱし、と驚いたように瞬いた。
「ケ...ケーキはそっちだぞ。」
「うん。でもね、最初にこっちを味見させて。」
なんだそれ、という声は消え入りそうで。
顔を近づけると、薄い瞼がぎゅ、と閉じられる。震えている唇にわずかに触れたかと思ったとき
「「「メリぃークリスマぁーーーーーース!!!!!」」」
ぱぁん、と何かの弾ける音と共に周りが明るくなった。はっとしたように目を開いたルルーシュが慌てて飛び退く。ぎょっと辺りを見渡せば、クラッカーを手にしたミレイ、リヴァル、ナナリー、ジェレミア、そしてなぜか一人携帯電話を持ったアーニャの姿があった。記録、という呟きが聞こえたのは気のせいだろうか。
「はいお疲れさまぁ!おかえんなさいスザク。ご苦労様!」
「は?えと、あの、」
「ごめんなさいねぇ、ナナちゃんに聞かなかったら大変だったわ。もう、ルルーシュも早く言いなさい!水臭いったら!」
「....あの?」
「あら、だってあなたルルちゃんの恋人でしょ?ごめんなさいね、それであんなに心配してたのねー。」
ばっ、とルルーシュの顔が沸騰しそうなほど赤くなった。満面の笑みを浮かべたミレイの隣ではにこにことナナリーが微笑んでいる。
「まぁお詫びと言ったらなんだけど、こうして演出してあげたんだから勘弁してね。中々素敵だったでしょ?」
だったら最後まで邪魔しないでほしかった。
「まー、それにしても良く似合うわぁルルちゃん!来年もこれでいきましょ!!」
「だ....駄目です!!絶対駄目ぇ!!!!」
いつの間にか窓の外をちらちらと雪が舞い始めている。
外の静寂と裏腹に、小さな店の中は賑やかな声が遅くまで続いていた。
...................................................................
ということです。
お次はオマケの後日談でございます。
「え!?は、はい!」
「ジェレミア!オレンジのカットは済んだか!?」
「こちらです!」
「すんません!これどこに置きますか!?」
「そこの棚だ!上から3番目!」
クリスマスイブ当日、店は朝からてんてこまいだった。臨時のアルバイトなども加わり厨房も店もいつもより人数が多い。その全員をてきぱきと指示するルルーシュの指導力はすごい、と感心してしまう。
それにしても気になる。抽選は昨夜ミレイの手で行われ、結果は既にルルーシュに伝えられているらしい。一体誰に当たったのだろう。ルルーシュに聞いてみたい気もするけれど、忙しそうでとてもそれどころじゃない。
ありがとうございました、とナナリーの声が聞こえる。ケーキの箱を手に幸せそうに寄り添って店を出て行くカップルが、ひどく羨ましかった。
最後の配達から帰った頃にはもうすっかり日も暮れて、ショーケースの中身も随分少なくなっていた。閉店時間も近い。仕事帰りのサラリーマンらしい男性が小さな箱を持って店を出ていくのと入れ違いのように中に入ると お疲れさまでした、と微笑むナナリーに迎えられた。
「こちらは大丈夫ですから一休みして下さい。先程ミレイさんが差し入れを持ってこられたんです。」
「うん、ありがとナナリー。君も無理しないで。」
そう声をかけて控え室に入ると、フライドチキンの箱が乗ったテーブルの前にはにこにこと手を振るミレイとアルバイトのリヴァルの姿があった。もうちょっと二人きりにしておいてあげた方がよかったかな、とリヴァルの赤い顔を見て思ったが、そんなことにも気づいていないように立ち上がったミレイが椅子を勧めてきた。
「お疲れさま。忙しかったみたいね?」
「ええ、凄い人気ですよね。」
本当に、クリスマス前後のケーキ屋がこんなに忙しいものとは思わなかった。ルルーシュは殆ど休んでいないのではないだろうか。あの細い体で無理をしていないといいけれど。
そんなことを思っていると かちゃり、と扉が開いてルルーシュが顔を出した。厨房も落ち着いたのだろう。ミレイがにこり、と待ちかねたように微笑んだ。
「ルルちゃん、そろそろ準備してね。」
「.......わかりましたよ。」
はぁ、とルルーシュが溜息をつく。途端、どきりと心臓の鼓動が跳ね上がった。準備、というのはつまり、例の準備だろう。
やっぱり嫌だ。例え相手が誰でもこれは譲れない。こうなったら最後の手段だ。
「ルルーシュ!それ僕が行くから!」
「は?」
ルルーシュが驚いたように振り返る。色々考えたが結局これしかない。
「なに言ってる。これは俺が....」
「だって!何かあったらどうするの!?」
「何かって....」
「だから!部屋の中に引っ張り込まれたり押し倒されたりとか!!」
「は??」
まったくわかってなさそうなルルーシュに対し、リヴァルは 聞いてはいけない、と言いたげに耳を塞ぎミレイは意味ありげににまにまと笑っている。
「...あのな。お前一体なに言って...」
「だから、」
そのとき再び扉が開くとナナリーが少し困ったような顔で入ってきた。どうしたのかと振り返ると。
「お兄様、私今からちょっと配達に行ってきますね。お店の方には今アーニャさんが入って下さってますから。」
「え?」
「どうしたんだナナリー?そんな急に。」
「今お電話があって、ケーキを予約して頂いてた南様が、怪我をしてこちらに受け取りに来られないんだそうです。私、今から届けに行ってきますね。」
「え!?」
「駄目だナナリー!罠だ!」
南といえばあの眼鏡の男だろう。ナナリー目当ての客代表だ。それはちょっとやめた方がいいんじゃないだろうか。
「俺が行ってくる!ナナリー、お前はここにいろ!」
「え?でも」
「何かあったらどうする!俺が行ってくる!」
住所はどこだ、と予約者名簿をパソコンで検索し始めるルルーシュを見ていると、つくづく妹が大事なんだなぁ、と思わずにいられない。そもそも今回のことだって、ナナリーの代わりに言い出したことだったと思い出した。
仕方ない。ルルーシュだってきっと今日は疲れてるはずだ。しかももう一仕事残っている。心配は残るけど、少しでも力になりたい。
「僕が行ってくるよ。住所はここだね?」
「え?」
パソコンに表示された住所と地図を頭で照会してみる。最近のアルバイトのおかげで自分の家の近所よりこの周辺によほど詳しくなってしまった。バイクを使えばあっという間だ。
「でもスザクさん、お疲れでしょう?今日だってずっと、」
「平気だよ。それにナナリーに何かあったら大変だし。」
はたして今のルルーシュの心配と、自分が心配していることが同じだということにこの鈍感な恋人は気づいてくれるだろうか。
「じゃあ行ってくるね。それからルルーシュ、危ないと思ったらすぐ逃げてよ。できればジェレミアさんと一緒に行ってきてね。」
「スザク、」
何か言いかけたルルーシュの声を背中に聞きながら部屋を出た。ジェレミアはああ見えて腕が立つ。彼がついていってくれれば大丈夫だろう。本当は自分がついていきたかったけれど。
外に出るとひんやりと冷たい空気に息が白く曇った。そう言えば今日は雪になると言ってたっけ、と思いながらバイクのキーを差し込んだ。
無事配達を終えて帰る頃にはもう店の明かりは消えていた。バイクを裏口に停めると、配達用の収納箱の中から花束を取り出した。幸い潰れてはいないようだ。
やっぱり自分が行ってよかった。配達先を尋ねて呼び鈴を押すと、いきなり扉が開いてこの花束がどん、と突き出されたのだ。なんだ一体、と思っていると花束の向こうの眼鏡とかちりと視線がぶつかり、しばし気まずい空気が流れたものだった。(怪我というのは一応嘘ではなく片足を引きずっていたので お大事に、と言ってきたが)どうもナナリーが来るものと勘違いしていたらしい。あの様子では妙なこともできなかっただろうから、逆に少しだけ気の毒だったかもしれない。
通用口から中に入るとしんと静まっている。もう片付けも終わって皆帰ったのだろうか。でも鍵は開いてたしな、と思いながらいつも休憩に使っている控え室の扉を叩くが返事が無い。やはり誰もいないのだろうか。不思議に思いつつ中に入れば部屋は薄暗く、テーブルの上に置かれたキャンドルのほのかな明かりとツリーの飾りだけが点滅しながら輝いて辺りを照らしていた。
「スザク」
不意に聞こえた声。あれ、と思いながら振り返るとそこに
「...え?」
目に飛び込んだ赤と白。クリスマスの妖精というのはこういうものかもしれないと、一瞬思った。
「......えと.....ルルーシュ?」
「違う」
「え?」
「見ての通りのサンタクロースだ。」
そこにいたのは可愛らしいミニスカートのサンタ風衣装に身を包んだルルーシュ。すんなり伸びた足にはこれも赤い膝上までのブーツ。赤い帽子の下の白い顔はこっちも合わせたように頬が赤く染まっている。その中でじっとこっちを見ている紫の瞳にツリーの明かりが映ってとても綺麗に見えた。きっとこんなに可憐なサンタは世界中どこを探してもいないに違いない。
「ど...どうしたの?配達、行ったんじゃ....」
「だから配達に来た。」
「え?」
「だから。お前が当たったんだ。」
「え??」
どういうことだろう。ケーキは買って帰ろうと思っていたけど、予約はしてなかったはずなのに。
「お前、クリスマスも俺が作ったケーキが食べたい、と言ったじゃないか。あれは予約じゃなかったと言う気か!?」
「え??あの、それって、」
それはルルーシュの誕生日、彼にプレゼントのつもりで注文したケーキを前に自分が言った言葉。まさか覚えてくれていたなんて。
「ルルーシュ、あの、」
「よく働いたいい子にサンタからのプレゼントだ。」
ほら、と差し出されたのは可愛いデコレーションが施された小さなケーキ。なぜかその上にはトナカイならぬ黒猫の飾りが乗っていた。そういえば家で飼ってる猫の写真を見せたことがあったっけ。片目のブチまでそっくりだ。
どうしよう。嬉しくてなんだか泣けてきた。
声がつまりそうになるのをなんとかこらえて ありがとう、と返すと ごし、と目元をこすってケーキを受け取って、かわりにテーブルの上に置いていた花束を差し出した。
「貰い物で悪いんだけど、これあげる。僕のサンタさんに。」
帽子の下の顔が抱えたバラの花束と同じぐらい赤くなった。まるでケーキに乗ってるイチゴみたいだ。
「ね、ちょっと味見していい?」
「え?ああ、」
それじゃあ、とそっと手を伸ばして花束の向こうの小さな顔を包み込むと長い睫毛がぱしぱし、と驚いたように瞬いた。
「ケ...ケーキはそっちだぞ。」
「うん。でもね、最初にこっちを味見させて。」
なんだそれ、という声は消え入りそうで。
顔を近づけると、薄い瞼がぎゅ、と閉じられる。震えている唇にわずかに触れたかと思ったとき
「「「メリぃークリスマぁーーーーーース!!!!!」」」
ぱぁん、と何かの弾ける音と共に周りが明るくなった。はっとしたように目を開いたルルーシュが慌てて飛び退く。ぎょっと辺りを見渡せば、クラッカーを手にしたミレイ、リヴァル、ナナリー、ジェレミア、そしてなぜか一人携帯電話を持ったアーニャの姿があった。記録、という呟きが聞こえたのは気のせいだろうか。
「はいお疲れさまぁ!おかえんなさいスザク。ご苦労様!」
「は?えと、あの、」
「ごめんなさいねぇ、ナナちゃんに聞かなかったら大変だったわ。もう、ルルーシュも早く言いなさい!水臭いったら!」
「....あの?」
「あら、だってあなたルルちゃんの恋人でしょ?ごめんなさいね、それであんなに心配してたのねー。」
ばっ、とルルーシュの顔が沸騰しそうなほど赤くなった。満面の笑みを浮かべたミレイの隣ではにこにことナナリーが微笑んでいる。
「まぁお詫びと言ったらなんだけど、こうして演出してあげたんだから勘弁してね。中々素敵だったでしょ?」
だったら最後まで邪魔しないでほしかった。
「まー、それにしても良く似合うわぁルルちゃん!来年もこれでいきましょ!!」
「だ....駄目です!!絶対駄目ぇ!!!!」
いつの間にか窓の外をちらちらと雪が舞い始めている。
外の静寂と裏腹に、小さな店の中は賑やかな声が遅くまで続いていた。
...................................................................
ということです。
お次はオマケの後日談でございます。
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