Close Encounters of the Third Kind -stage 1-
闇の中。
それらは蠢いていた。ひそやかな息づかい。囁きかわす声。時折きらりと光る目。それが一瞬ぴたりと止まると、一斉にある方向を向いた。そこには立ちすくむ一人の男。顔を引きつらせ、逃げ出そうとする背に冷たい銃口が向けられる。
乾いた銃声と悲鳴が長く尾を引いて、消えた。
蓬莱島内黒の騎士団本部の食堂は異様な熱気に包まれていた。いや、正確には約一名から発散される熱気が辺りを暑苦しくしていた。
その中心にいるのは騎士団内務掃拭賛助官、別名宴会太政大臣 玉城真一郎。うんざり気味の団員らを前に彼は熱弁を振るい続けていた。
「だからよ、間違いないって!!あれは絶対UFOだっての!!」
「....だから。流れ星かなにかだって。百歩譲ってそのUFOだとしたらレーダーに引っかかるだろ?」
「そーそー。UFOなんてSFの中の話。ありえないって。」
「け、夢の無い連中だな。いーか?この宇宙には何万、何億って星があるんだ!宇宙人がいたっておかしかねぇだろ!?」
あほらしい、と溜息をつく南らを他所に拳を固める玉城の目に、ちょうど食堂に入ってきた赤毛が飛び込んだ。これ幸い、と新たな獲物に声を張り上げる。
「カレン!お前信じるよな!」
「.....は?」
主語も無く何を信じろと。
思い切り眉を寄せたカレンの顔にはでかでかとそう書いてある。
「UFOだよUFO!!未確認飛行物体!!宇宙人が乗ってくるってー代物だよ!!」
「.....は??」
今日は朝からラクシャータに付き合わされて紅蓮のテストにかかりっきりで、遅くなった昼食をとりに空腹を抱えて来てみれば、この男は一体何を言っているのやら。
「俺ぁ見たんだよ!こうピカピカ光る奴が空をジグザグに飛んでよ、なんだあれ、とか思ってたら急にふらふらしだして、落っこちやがったんだ!!」
「....あっそ」
そんな深夜番組もあったかもね、とカレンは注文カウンターへ向かった。今日の日替わり定食はチキン南蛮だ。これにしよう。
「俺が思うにあれは偵察機だな。どっかから俺たちを見張ってやがんだよ!そのうち円盤がこう、ざざーっと大編隊組んで襲ってくんだぜ!久々に俺たち黒の騎士団の出番だなぁ。腕が鳴るぜ!お前も頑張れよ!騎士団のエース!!」
「.....ありがと」
給仕のおばさんから定食を受け取り(サービスで大盛りにしてくれた)席に着いたカレンは はぁ、と一つ息をつく。いただきます、と契約農家のお百姓さんに感謝を述べていざ箸をつけようとした途端
「..............??」
それは一瞬だった。しゅ、と黒い影が目の前をかすめたかと思ったときにはメインディッシュのチキンは失われていたのだ。
しん、と静寂が降りた。かたり、と箸を置いたカレンが立ち上がる。立ちのぼる凄絶なまでの鬼気に周囲の団員が一斉に後じさった。
ちら、とカレンの目がやや離れた床の上に落ちた。そこには黒い猫がうずくまりもぐもぐと何かを一心に咀嚼していた。
「....ちょっとアンタぁ!!何してくれんのよぉ!!」
食堂に響き渡る怒声に、外の廊下を通りすがった者までがびくり、と跳び上がった。しかし怒りを向けられた当の本人ーーー否これは正しくない。何しろ相手は人間ではないーーーは、ちら、と振り返るやまたもぐもぐと食事に取りかかった。どうもこのチキン南蛮(宮崎県産鶏使用)がいたく気に入ったようだ。
きっ、と眦をつり上げたカレンがその背後に忍び寄る。しかし手を伸ばすより早く猫はするりと足下をすり抜けた。
おお、と感嘆の声が上がる。騎士団のエースパイロット、紅月カレンの動きを読むとはコイツ只者ではあるまい、というニュアンスが多分に含まれている。
「ちょ、待ちなさいっ!!」
待てと言われて待つはずも無く、猫はたちまち走り出す。それを追うカレンとの追走劇が食堂内を舞台に繰り広げられる。椅子の上、テーブルの下、果ては団員達の頭の上を猫は自在に駆け回る。あちこちで食器を蹴倒されあるいは頭を踏まれあるいは足下をすり抜けられた団員の奇妙な悲鳴が上がった。
しかし食物の恨みは恐ろしい。鬼気迫る表情のカレンが猫を扉の方へ追いつめたとき
「ほぁ!!??」
「ぅえ!?」
シュン、と扉の開く音に珍妙な声が二つ重なった。見ればカレンが彼女のリーダーを押し倒しているではないか。おぉー、と別のニュアンスを含む感嘆の声とオペレーター娘達の黄色い歓声が上がった。思いがけない事態にカレンは固まり、そういった事態に更に弱いルルーシュは完全に硬直していた。(腰か背中をぶつけて痛いのもあるだろう)
「昼間っから公衆の面前で大胆なことだな。」
妙な空気に水をさすような冷ややかな声。ぎょっとしたようにカレンが飛び退く。ふふん、と皮肉げな笑みを浮かべる魔女を睨みつけ、身を起こしたルルーシュはがっちりと胸にしがみついた猫に溜息をついた。
「....姿が見えないと思ったら....外に出すなと言ったぞC.C.」
「何を言う。狭い部屋の中ではコイツも楽しいものか。動物愛護の精神に欠ける奴だな。」
「勘違いするな。動物の保護管理は人間の責任だ。お前のように安易に愛護を口にする奴らが結局管理不行き届きから不幸な野良犬野良猫を増やしてだな....」
「....あのさ。私の昼食どうしてくれるわけ?」
動物飼養管理論議を打ち切ったのは、カレンの暗い一言だった。
結局食堂のおばさんに1.5倍のチキンをもう一度作ってもらい、空腹を満たしたカレンが改めて司令室に足を運ぶと、そこには満腹らしい猫がソファの上で悠々と寝そべっていた。
聞けばC.C.が数日前に拾ってきたものらしい。行きつけのピザ屋で新作メニューを堪能し、ご機嫌で帰ろうとしていたところ、ふと気がつけばずっとついてきていたのだという。いたところに返してこい、とルルーシュは渋い顔だったが、やけに懐かれここに至っているのだそうだ。しかし理由はどうもそれだけではなさそうだ。
「.....なんかアーサーに似てるわよね。」
「だろう?少し小さいし目の色が違うがな。名前は『スザク』にしてやろうかと思ったがこいつが反対した。」
「当たり前だ!」
人間達の思惑を他所に猫は平和そのもの、といった様子でふぁー、と大きくあくびをする。薄く開いた目は淡い緑色。件の猫は黄色だ。しかしそれ以外は目の周りのブチといい先が箒状になった尻尾といいそっくりだ。よもやまたロイドが妙な薬を、と思いそれとなくナナリーに聞いてみたがどうやらそういった事態は起きていないらしい。
そういえばナナリーは 最近コゥ姉様が忙しそうで、と心配していた。
ブリタニアのニュース記事を検索してみると謎の失踪事件が多発しているらしい。失踪と言っても家財を始末するでもなく、所持金もさほど持たない状態で、いつものように外出したその先で突然行方をくらます、というケースが殆どだ。家族や周囲の人間の話では特に心当たりもないという。かといって死体が見つかるでもなく、大抵の場合数日のうちにぼんやりした様子で帰ってくる。そしてその間の記憶がひどく曖昧だというのだ。
咄嗟に頭に浮かんだのはよもやあのギアス嚮団の残党がどこかに残っていたのか、ということだった。だがあの一団は自分が完膚なきまでに叩き潰した。逃げのびた者がいるとは考えにくい。
更に奇妙なのはブリタニア領空でしばしば確認されるという国籍不明の機影だ。視認はできるがレーダーに映らない。しかも突然出たり消えたりする。何かしらの方法で空中に投影された立体映像かとも思ったが、映像を解析するとかなり大きい。そんなものを投影できるような大掛かりな施設などは確認されていないらしい。
細かいところでは最近家庭で飼育されている動物がやけに騒ぐ事が多いとか、そういった類いのものもあるようだが、いずれも原因は不明、なのだ。これでは国防軍の威信に関わるだろう。異母姉の苦労も推して知るべし、だ。恐らくラウンズ3人組も調査にかり出されていることだろう。(ナナリーに電話してた時も顔を出さなかった)
「で?この子どうすんの?ここで飼うの?」
「まさか。今飼い主を捜してるところだ。」
そういえばジェレミアが何やらポスターらしい紙束を持って出て行ったのはそれか、とカレンは納得した。
「まぁせいぜい可愛がってやれルルーシュ。どうやらお前を気に入ってるようだからな。」
「迷惑だ」
憮然とした声も聞こえてないように、猫はまた一つあくびをした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
本日より連載でお送りします。
タイトルは映画好きの方なら知ってるかも。
(某名作の原題です。)
つっても、思いついた直接の切欠は先日テレビで
T.クルーズ主演の某映画見たからですけど~
明日も続きます~
それらは蠢いていた。ひそやかな息づかい。囁きかわす声。時折きらりと光る目。それが一瞬ぴたりと止まると、一斉にある方向を向いた。そこには立ちすくむ一人の男。顔を引きつらせ、逃げ出そうとする背に冷たい銃口が向けられる。
乾いた銃声と悲鳴が長く尾を引いて、消えた。
蓬莱島内黒の騎士団本部の食堂は異様な熱気に包まれていた。いや、正確には約一名から発散される熱気が辺りを暑苦しくしていた。
その中心にいるのは騎士団内務掃拭賛助官、別名宴会太政大臣 玉城真一郎。うんざり気味の団員らを前に彼は熱弁を振るい続けていた。
「だからよ、間違いないって!!あれは絶対UFOだっての!!」
「....だから。流れ星かなにかだって。百歩譲ってそのUFOだとしたらレーダーに引っかかるだろ?」
「そーそー。UFOなんてSFの中の話。ありえないって。」
「け、夢の無い連中だな。いーか?この宇宙には何万、何億って星があるんだ!宇宙人がいたっておかしかねぇだろ!?」
あほらしい、と溜息をつく南らを他所に拳を固める玉城の目に、ちょうど食堂に入ってきた赤毛が飛び込んだ。これ幸い、と新たな獲物に声を張り上げる。
「カレン!お前信じるよな!」
「.....は?」
主語も無く何を信じろと。
思い切り眉を寄せたカレンの顔にはでかでかとそう書いてある。
「UFOだよUFO!!未確認飛行物体!!宇宙人が乗ってくるってー代物だよ!!」
「.....は??」
今日は朝からラクシャータに付き合わされて紅蓮のテストにかかりっきりで、遅くなった昼食をとりに空腹を抱えて来てみれば、この男は一体何を言っているのやら。
「俺ぁ見たんだよ!こうピカピカ光る奴が空をジグザグに飛んでよ、なんだあれ、とか思ってたら急にふらふらしだして、落っこちやがったんだ!!」
「....あっそ」
そんな深夜番組もあったかもね、とカレンは注文カウンターへ向かった。今日の日替わり定食はチキン南蛮だ。これにしよう。
「俺が思うにあれは偵察機だな。どっかから俺たちを見張ってやがんだよ!そのうち円盤がこう、ざざーっと大編隊組んで襲ってくんだぜ!久々に俺たち黒の騎士団の出番だなぁ。腕が鳴るぜ!お前も頑張れよ!騎士団のエース!!」
「.....ありがと」
給仕のおばさんから定食を受け取り(サービスで大盛りにしてくれた)席に着いたカレンは はぁ、と一つ息をつく。いただきます、と契約農家のお百姓さんに感謝を述べていざ箸をつけようとした途端
「..............??」
それは一瞬だった。しゅ、と黒い影が目の前をかすめたかと思ったときにはメインディッシュのチキンは失われていたのだ。
しん、と静寂が降りた。かたり、と箸を置いたカレンが立ち上がる。立ちのぼる凄絶なまでの鬼気に周囲の団員が一斉に後じさった。
ちら、とカレンの目がやや離れた床の上に落ちた。そこには黒い猫がうずくまりもぐもぐと何かを一心に咀嚼していた。
「....ちょっとアンタぁ!!何してくれんのよぉ!!」
食堂に響き渡る怒声に、外の廊下を通りすがった者までがびくり、と跳び上がった。しかし怒りを向けられた当の本人ーーー否これは正しくない。何しろ相手は人間ではないーーーは、ちら、と振り返るやまたもぐもぐと食事に取りかかった。どうもこのチキン南蛮(宮崎県産鶏使用)がいたく気に入ったようだ。
きっ、と眦をつり上げたカレンがその背後に忍び寄る。しかし手を伸ばすより早く猫はするりと足下をすり抜けた。
おお、と感嘆の声が上がる。騎士団のエースパイロット、紅月カレンの動きを読むとはコイツ只者ではあるまい、というニュアンスが多分に含まれている。
「ちょ、待ちなさいっ!!」
待てと言われて待つはずも無く、猫はたちまち走り出す。それを追うカレンとの追走劇が食堂内を舞台に繰り広げられる。椅子の上、テーブルの下、果ては団員達の頭の上を猫は自在に駆け回る。あちこちで食器を蹴倒されあるいは頭を踏まれあるいは足下をすり抜けられた団員の奇妙な悲鳴が上がった。
しかし食物の恨みは恐ろしい。鬼気迫る表情のカレンが猫を扉の方へ追いつめたとき
「ほぁ!!??」
「ぅえ!?」
シュン、と扉の開く音に珍妙な声が二つ重なった。見ればカレンが彼女のリーダーを押し倒しているではないか。おぉー、と別のニュアンスを含む感嘆の声とオペレーター娘達の黄色い歓声が上がった。思いがけない事態にカレンは固まり、そういった事態に更に弱いルルーシュは完全に硬直していた。(腰か背中をぶつけて痛いのもあるだろう)
「昼間っから公衆の面前で大胆なことだな。」
妙な空気に水をさすような冷ややかな声。ぎょっとしたようにカレンが飛び退く。ふふん、と皮肉げな笑みを浮かべる魔女を睨みつけ、身を起こしたルルーシュはがっちりと胸にしがみついた猫に溜息をついた。
「....姿が見えないと思ったら....外に出すなと言ったぞC.C.」
「何を言う。狭い部屋の中ではコイツも楽しいものか。動物愛護の精神に欠ける奴だな。」
「勘違いするな。動物の保護管理は人間の責任だ。お前のように安易に愛護を口にする奴らが結局管理不行き届きから不幸な野良犬野良猫を増やしてだな....」
「....あのさ。私の昼食どうしてくれるわけ?」
動物飼養管理論議を打ち切ったのは、カレンの暗い一言だった。
結局食堂のおばさんに1.5倍のチキンをもう一度作ってもらい、空腹を満たしたカレンが改めて司令室に足を運ぶと、そこには満腹らしい猫がソファの上で悠々と寝そべっていた。
聞けばC.C.が数日前に拾ってきたものらしい。行きつけのピザ屋で新作メニューを堪能し、ご機嫌で帰ろうとしていたところ、ふと気がつけばずっとついてきていたのだという。いたところに返してこい、とルルーシュは渋い顔だったが、やけに懐かれここに至っているのだそうだ。しかし理由はどうもそれだけではなさそうだ。
「.....なんかアーサーに似てるわよね。」
「だろう?少し小さいし目の色が違うがな。名前は『スザク』にしてやろうかと思ったがこいつが反対した。」
「当たり前だ!」
人間達の思惑を他所に猫は平和そのもの、といった様子でふぁー、と大きくあくびをする。薄く開いた目は淡い緑色。件の猫は黄色だ。しかしそれ以外は目の周りのブチといい先が箒状になった尻尾といいそっくりだ。よもやまたロイドが妙な薬を、と思いそれとなくナナリーに聞いてみたがどうやらそういった事態は起きていないらしい。
そういえばナナリーは 最近コゥ姉様が忙しそうで、と心配していた。
ブリタニアのニュース記事を検索してみると謎の失踪事件が多発しているらしい。失踪と言っても家財を始末するでもなく、所持金もさほど持たない状態で、いつものように外出したその先で突然行方をくらます、というケースが殆どだ。家族や周囲の人間の話では特に心当たりもないという。かといって死体が見つかるでもなく、大抵の場合数日のうちにぼんやりした様子で帰ってくる。そしてその間の記憶がひどく曖昧だというのだ。
咄嗟に頭に浮かんだのはよもやあのギアス嚮団の残党がどこかに残っていたのか、ということだった。だがあの一団は自分が完膚なきまでに叩き潰した。逃げのびた者がいるとは考えにくい。
更に奇妙なのはブリタニア領空でしばしば確認されるという国籍不明の機影だ。視認はできるがレーダーに映らない。しかも突然出たり消えたりする。何かしらの方法で空中に投影された立体映像かとも思ったが、映像を解析するとかなり大きい。そんなものを投影できるような大掛かりな施設などは確認されていないらしい。
細かいところでは最近家庭で飼育されている動物がやけに騒ぐ事が多いとか、そういった類いのものもあるようだが、いずれも原因は不明、なのだ。これでは国防軍の威信に関わるだろう。異母姉の苦労も推して知るべし、だ。恐らくラウンズ3人組も調査にかり出されていることだろう。(ナナリーに電話してた時も顔を出さなかった)
「で?この子どうすんの?ここで飼うの?」
「まさか。今飼い主を捜してるところだ。」
そういえばジェレミアが何やらポスターらしい紙束を持って出て行ったのはそれか、とカレンは納得した。
「まぁせいぜい可愛がってやれルルーシュ。どうやらお前を気に入ってるようだからな。」
「迷惑だ」
憮然とした声も聞こえてないように、猫はまた一つあくびをした。
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本日より連載でお送りします。
タイトルは映画好きの方なら知ってるかも。
(某名作の原題です。)
つっても、思いついた直接の切欠は先日テレビで
T.クルーズ主演の某映画見たからですけど~
明日も続きます~
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